■踊る少女

そんな世界で、キミたちも動く死体となる。

それはただの死体ではない。
少女の死体だ。
朽ちることない少女の死体、あるいは朽ちかけたまま止まった死体。
ネクロマンサーにドールと呼ばれる、お気に入りの人形たちだ。

ドール。
しかし、それは動くだけのお人形ではない。
彼女たちには、死んだ体にふさわしからぬ、生きた“こころ”がある。
キミは、その判断を彼女たちの言動に活かしていい。
その体は死んでいるが、その心はキミと同じように生きているのだから。
彼女たちは笑い、泣き、怒ることができる。
少しだけなら、生きていた頃も覚えている。

記憶のカケラが与えてくれるのは、幸福な過去ばかりではない。
目の前に現れるこの世界の現実は、絶望ばかりを伝えてくる。
与えられた材料から想像される未来は、どこまでも暗い。
朽ちない体は、心を朽ちさせ、狂気で苛む。
共に目覚めたドールだけが心を癒してくれるだろう。
目覚めたことは終わった世界の彼女らにとって、悲劇だろうが。
それでも、狂気と絶望に振り回され、踊る彼女らは、何より美しい。

ドールは、ただの少女の死体ではない。
武装された少女。
変異された少女。
改造された少女。
彼女らは、平和に語らいふざけあうだけの少女ではないのだ。
物騒に、醜悪に、冷酷に、破壊する力を与えられている。
白刃を閃かせ、銃声を轟かせ、鉤爪を振り上げて、踊ることもできる。
相手はネクロマンサーの雑兵に追従者。
壊し壊され、縫い合わせて元通り。
地獄の舞台。
けれど、奴らの望み通りに踊る必要はない。
かき混ぜ、目論見を壊してやればいい。

終わった世界に少女は踊る。
たとえ、ネクロマンサーの目論見から始まったステップであろうと。
激しく舞う中、奴を引きずり出し。
その手を捕らえ、テラスから放り出せる日も来るだろう。

戻る

(C)2011 Ryou Kamiya