「うーん、素早くエラッタは出してくれたものの、疑問の生じる点は多いね」
「うう……だって」
「まー、今回は諸事情あったみたいだけど。混乱は何とかしなくちゃねぇ」
「今回の問題はクイーン単独での解決可能と判断……私は拠点待機に移行」
「待ちなよ、たまには……」
「――命令権を認めず」(離脱)
「相変わらず愛想ないわねぇ」
(むぅ。彼女だけまるで心が通わせられない)
「そ、そんなことありませんわ。バルキリーさんはいつも優しくしてくださるんですから!」
「アレがねぇ……アンタはアレに甘やかされて、ダメになったわけ?」
「だっ、ダメじゃありません! 私がバルキリーさんも支配する選ばれしサヴァントですのよ!」
「ハイハイ」
「……とりあえず、質問に答えていってもらおうかな」(頭ぽむぽむ)
「は、はい〜」
 
「今回は『歪曲の舞踏』の追加マニューバ関係ばっかりねぇ……まず、サイケデリックのスキル【魂の抱擁】、アリスの追加スキル【祈り】、コートの追加スキル【憎まれ役】の三種類だけど、これって『精神崩壊』状態で使ってもいいの?」
「どういうことでしょう? 『完全解体』ならともかく、『精神崩壊』で使えなくなるマニューバはないかと……」
「これは以前からあった『精神崩壊』状態でホリックの【修羅】とか使っていいのか、って疑問と同じだと思うよ」
「なるほど! わかりましたわ〜。でしたら細かな理由が微妙に違いますけど、どれも使用可能ですわ♪」
「とりあえず【魂の抱擁】と【憎まれ役】は、狂気点が入るけど満タン状態だから『精神崩壊』以上にはならない……ってこと?」
「ですわ♪ どちらも『精神崩壊』状態では強力なスキルと言えますわね」
「わざわざ『精神崩壊』を続けて発動させるかは疑問だけど、ある種の保険にはなりそうだね」
「で? 【祈り】は、5カウント後の効果発動までに狂気点を受けた場合のコト言ってるんでしょ?」
「ええ。『精神崩壊』状態でも【祈り】を使用できますが……5カウント経過する間に“狂気点を受けた”場合、効果は発動しません。未練にこれ以上増えなくても、“狂気点を加えた”ことに変わりはありませんから〜」
「ふむ。つまり『精神崩壊』中で、狂気点がそれ以上書き込まれなくても“狂気点を加えた”という事実に変わりはないわけだ」
「ええ♪」
 
「それじゃ次ね。サイケデリックのやたら強いスキル【盤上の駒】は手駒専用パーツ【不動】を持つ手駒に効果あるの?」
「確かに『移動』の効果はありませんが……行動値2点減少はできますわ」
「えっ!? それはちょっと……つ、強すぎない!?」
「ただでさえ、【盤上の駒】は強いのにね」
「でも、悔しいことに私達サヴァントは使えないのですわ……」
「使われちゃたまんないってーの! 次よ次!」
 
「アリスの追加スキル【祈り】、それに手駒専用の追加パーツ【絶対歪曲】【狂気の波長】【具現する悪意】なんかの5カウント待ち系マニューバだけど……これって、発動までに損傷したパーツを修復すれば効果は発動するわけ?」
「それはダメですわー! 修復したって“損傷した”ことに変わりはないんですもの!」
「さっきの“狂気点を加えた”事実と同じということだね。“損傷した”という事実が重要で、その時点で効果の発動は行われなくなってしまうわけかな?」
「ええ、そういうことですわっ」
「アンタ、もうちょっと論理的に会話しなさいよ……」
「そ、そんな……私は十分論理的ですわ!」
「まあまあ、ちゃんと答えてるんだし、そこまできつく言わなくてもいいさ」(なでなで)
「論理的に記述されてないせいで、いろいろ面倒になってるんじゃないのー?」
「は……はぁ、それは……その」
「まあまあ」(苦笑)
 
「フン……次はジャンクの追加スキル【楽園の守護者】。これ持ってるドールが複数いたら、効果は重なっていーわけ?」
「こ、これは普通に重なります。『楽園』に手駒が出なければ意味もありませんけど……」
「しかし、効果が重なるなら【発勁】や【盤上の駒】なんかでいろいろ狙えそうな気もするね」
「そうねー。【盤上の駒】と合わせたら、アンタ達を封殺するのも簡単じゃない?」
「え……いえ、その(汗)」
「PLがそういった使い方をしないよう『楽園』に毎回やたら手駒を置かない方がいいかもしれないね? ドールが対策を得た途端に配置しなくなっては、PLのストレスも溜まるだろう」
「うう、置かないようにします……」
「無理に置かないのもよくないよ。PLがワンパターンに馴れるのが問題なんだ。いろんな陣形を試せばいいんじゃないかな」
「……もう、コートがNCやればいいんじゃない?」
「いやいや。戦術はボクが上かもしれないけどね。演出やストーリーじゃ、彼女に及ばないんだよ」
「えへへー♪」
「ふーん……」(ぐりっぐりっぐりっ)
「いたっ、いたいですわっ!」
 
「はーっ(ため息)。そいじゃ次ね。タナトスの追加スキル【断罪】を使った後、さらにジャッジタイミングのマニューバを使用していいの? 具体的には『支援』とか『妨害』ね」
「ええ。問題ありませんわ。【断罪】は振りなおしを禁止するのみですから。判定値を増減させること自体はかまわないのです(えっへん)」
「アンタがいばって言うコトじゃないないでしょ!」
「うう、たまにはいいじゃないですか〜」
「ホントに、たまにだけどね」(なでなで)
「そうそう、そうなんですよ〜♪」
(え? 今、喜ぶ要素あった?)
「【断罪】は、【刹那】と組み合わせれば『妨害』も受けなくてお得ですわ」
「……ん? じゃあ、私がセットで持っとけば、アンタの【選ばれし美貌】とやらも無効なんだ?」
「えっ……で、でも、私には【円舞曲】が!」
「攻撃される前に使わないと、【刹那】には『ラピッド』も通用しないよ。【フローター】なら有効だけどね」
「ええええ……じゃあ私、斬られちゃうんですの? いやー!」
「さっき自分でそういう効果だって言ったでしょーが。覚悟しなさい」
「ほらほら、二人とも遊んでないで、そろそろ次の質問に進みなよ」
 
「少しは叱った方がいいんじゃない? じゃー、次は……ゴシックの追加スキル【完全捕食】。これって大成功の時も、効果あるの?」
「あら? 『成功』には『大成功』も含まれてませんでしたっけ?」
「う〜ん。特に明記していないね。基本ルールブックP97のチャートで、判定値11以上なら『大成功』というチェックが通常成功より上にあるよ。確かに『大成功』は『成功』と別枠に受け取れなくもないかな」
「とにかくどっちなのよ? 『大成功』で発動しないなら、5パーツ以下の相手にしか効かないってことじゃない!」
「は、発動しますわ! 『大成功』でも、もちろん発動します!」
「つまり、『大成功』も『成功』に含むってことだね。同じく『大失敗』も『失敗』に含まれる……でいいのかな」
「ええっと、ええっと…………ハイ! かまいませんわ!」
「いろいろ釈然としないわねぇ」
「ボクも、いろいろ言いたいところだけれどね」
「す、すみませんわ……」(しゅん)
 
「ハイハイ。それじゃ次。バロックの追加スキル【凶化器官】でダメージ上昇した攻撃が大成功した後、2レベル追加変異パーツ【おおつの】は発動するの? 『連撃』が付いちゃうんでしょ?」
「あ。それは大丈夫ですわ。【凶化器官】は“攻撃宣言時”。【おおつの】は“攻撃で大成功が出た時”ですもの♪ 【凶化器官】で付属効果が失われても、その後から付けられた効果を、さらに失わせることはできませんわ♪」
「なるほど。タイミングの違いということだね」
(ふふふ、この問題は想定して、バルキリーさんと予習してきましたわ!)
「ややこしい。後から宣言したら有効ってこと?」
「いえその『ラピッド』なんかは後付でも宣言した方が先処理ですので……」
「私の【災禍】はどーなのよ」
「【災禍】は『ダメージ』タイミングだね。だから普通に『全体攻撃』を乗せられるのかな?」
「ですわっ」
「ふーん……まあ【災禍】が使えるならいいけど」
「【おおつの】については別途の問題もあるけど……これはエラッタかな」
「は、はい。追加エラッタもあります……」
 
「進歩しないわねぇ……次。1レベル追加武装パーツ【スコップ】の攻撃に、1レベル改造パーツ【スチールボーン】を使ったら……『切断』は無効化できるの?」
「え、ええっと……無効化できますわ! 【スコップ】が無効にするのは『防御』ですもの。追加効果である『切断無効化』は有効ですわ」
「まあ妥当なところだね。攻撃側有利ってことかな」
「サヴァントには微妙だけど、ホラー相手なら【スコップ】強いもんねー。武装4になった時とか、悪くない選択肢だわ」
「そうだね。ボクも後衛の予備武器は【スコップ】にしようかと思うくらいだよ」
「お、お二人とも、どうして私に先を向けますの?」
 
「じゃ、あっさり済んだところで……2レベル追加武装パーツ【棺桶】で、1レベル追加武装パーツ【救急箱】や1レベル追加改造パーツ【ジャンクパーツ】を修復した場合、【救急箱】【ジャンクパーツ】は破壊されなかったものとして効果を発動できる?」
「えっ? ええっと……ええっと。ええっ?」
「あー、うん。これはボクが答えようかな」(くい)
「あっ、私の方が背は高いですのにっ……」(すとん、膝の上に座らされて)
「つまり、“破壊されなかった”ことを、『戦闘終了時』という瞬間ではなく、そのタイミング中で処理順を任意に決めていいのか、ということだね」(すりすり)
「そーなるわね」(むすっ)
「この『戦闘終了時』については以前もあったよ。そのFAQの内容はこれだ」(さわさわ)
 
  Q:「ターン終了時」「戦闘終了時」処理が複数ある場合に順番はあるのか?
  A:いいえ、ありません。
「ターン終了時」「戦闘終了時」処理が複数ある場合、PLが任意の順番で処理を行ってかまいません。
 たとえば、【失敗作】でターン終了時に【うじむし】を損傷させた場合、その後、【うじむし】のターン終了時効果で【うじむし】を修復させる事ができます。
 また、戦闘終了時に【独占】【執着】【恋心】【対抗】などの未練の発狂効果が発動していても、「たからもの」による狂気点減少の効果で無効化させることができます。
 
「あ、ああ……なるほど、同じことなのね。得になるよう考えちゃっていいってこと?」(むぅ)
「そうだね。さっき【祈り】で“損傷した”という事実は……と言っていたからまぎらわしいけれど。この例に倣うなら、『戦闘終了時』には“破壊されていない”ことに変更してもいいと考えられるね」(むにむに)
「ひゃん♪ く、くすぐったいですわ〜」
「ふ、ふーん……まあ、そういうことならしょーがないか」(もじもじ)
「このあたり、もう少し整理した形にすべきとは思うけどね」(ぐりぐり)
「い、いたいです……も、申し訳ありませんわ……」
 
「あーもう! じゃれついてないで次よ! 3レベル追加武装パーツ【アフリカ投げナイフ】は『転倒』が入っているけど、『白兵攻撃1+切断』の方だけでなら手駒に持たせてもいいの?」
「あー! これは私も思ってました! 白兵攻撃の最大射程2ですもんね!」(がばっ)
 
(ごがっ)

「おごっ! うぐぐ……あ、【あご】が」
「あわわわわ。ごめんなさい!」(コートの膝から下りて)
「何やってんの……で? どーなの?」(コートの【あご】なでなで)
「うう……ごめんなさい。えと、ええっと……バルキリーさんによりますと『白兵攻撃1+転倒』を封印してしまうなら、ただの劣化修正ですし、かまいませんわ」
「カンペ見ながら言うほどのことじゃないでしょ」(なでなで)
「えと、とにかく『転倒』を使わなければ手駒も使用OKですわ! 私に付ければ『奈落』配置で十分戦えるのでお得ですわよ!」
「確かに【災禍】や【怪力】も乗せられるわね。キメラあたりが持ってたら厄介だわ」(なでなで)
「え? あのー、私が……」
「アンタ、ゾンビ呼ぶだけじゃない」(なでなで)
「そ、そんなことありませんわ! ブッチャーさんも呼べますわ!」
「はいはい」(すりすり)
(うーん、膝の上から逃げられちゃったけど……これはこれでいいか)
 
「じゃ、これは簡単な確認だけど……3レベル追加改造パーツ【サイコブラスター】で受ける狂気点って、2レベル追加改造パーツ【アンテナ】の効果で無効化できるの?」(なでなで)
「え? 普通に無効化できますけど……」
「ああ、確かに【サイコブラスター】の場合は“コストの代わりに”がどこまでかかっているか、わかりにくいね。これは『狂気点』も“コストの代わりに”なんだね?」(さわ)
「ひゃっ、あっ……ああっ! そ、そうですわ! わかりづらいですわね……ごめんなさい。『狂気点』も“コストの代わりに”です」
「ま、それならいいけど」(つねり)
「あはは。それじゃ次に行こうか」
 
「手駒専用の追加パーツ【騎乗調整】を持つ手駒と、“乗り手”が別のエリアにいた場合。【騎乗調整】持ちが移動したら、“乗り手”は瞬時に【騎乗調整】を持つ手駒のいるエリアに移動していいの?」(なでなで)
「あら? あら……確かに初期配置を同じにしなくちゃいけないなんて書いてませんわね」
「極端な話だと、『奈落』のキミが、『花園』から『楽園』に移動したマウントの上に瞬間移動してくることもありえるね?」(さわさわ)
「んっ…………あ、でも、いいと思いますわ。ルール上問題はないことですし、NCが演出をきちんとできるなら、んっ、その……面白い戦闘ギミックとも言えますもの」(もじもじ)
「…………で? どう演出するワケ?」(無表情)
「たとえば、『歪曲の舞踏』のテーマであるESPのテレポートでもかまいませんし……っ、ひゃん……その、あと、単純に高くジャンプして移動でも、かっこいいと思いますわよ」
「さすがだね。それに【騎乗調整】は一体しか作っちゃいけないものでもない。複数の【騎乗調整】付き手駒をあちこちに配置すれば、舞台上を縦横無尽に動けそうだね」(くいくい)
「ひゃんっ」(とすん)
(両手に花ってコト?)
「使いようによってはいろんな戦術を組めますから……マウントさんに限らず、玉座型とか機械装置型の手駒を作って【騎乗調整】を付ければよいかと思いますわ♪」
「やっぱりNCとして、キミにはかなわないね」(なでなで)
「えへへ〜」(てれてれ)
 
「マジメにやんなさいよっ! 最後の質問! さっきのと似てるけど、手駒専用の追加パーツ【守護本能】を複数の手駒に持たせ、同じ“主”を守ってもいいの? また、相互に“主”としてもいい?」
「これはこのまま、【騎乗調整】でも言えそうだけど……どうなんだい?」(ぎゅーっ)
(う、両脇で二人抱き寄せないでよぉ……)
「問題ありませんわ。【守護本能】【騎乗調整】どちらも、“主”や“乗り手”を相互に指定し合ったり、複数が同じ対象を指定してかまいません」
「その演出はどうするのかな」(すりすり)
(ちょっ、なんであっちに頬ずりするのよ!)
「双子やパートナー、チーム、それに肉体的につながっている二体で一つの手駒というのが常套ですわね♪」
「ふぅん……ボクやオートマトンも、負けたらキミに【騎乗調整】されたりするのかな?」
「えっ? ……うふふ、どうしましょうか?」
「ちょっ、少しは否定しなさいよ!」
「とりあえず、キミが“乗り手”にふさわしいか試してみてもいいかな?」
「はい? 試さなくても、もう何度も……」
「だーーーーー!! やめなさい! 最後の質問って言ったけど、まだエラッタ残ってるんだから!」
 
「同意。まだエラッタは残っている」(ぬっ)
「うわっ」
「あっ、バルキリーさん♪」(ぎゅっ)
「あー、いいところに来てくれたわ。エラッタ紹介任せていい?」
「当然。そのために来た。まずは単純なミスによるものが以下の通り」
 
  ■P61 リアニメイターのデータ【合成再活性化】のタイミング・コスト・射程
  誤:《ジャッジ/2/1〜2》
  正:《アクション/効果参照/0〜1》
 
  ■P99 左列下から4行目
  誤:【狂った肢体】
  正:【哀れな肢体】
 
「ん? 単純と言うわりには、大きなエラッタだね」
「しかし表記ミスであり、本文を読めば自ずと分かるレベル。【合成再活性化】がやや奇妙な誤解を招きやすい」
「ま、まあこの二つ程度ならまだ……」
「前回は酷かったものねぇ」
「本題はむしろこれから。使用効果上で問題発生しうるエラッタがある」
 
  ■P42 1レベル武装パーツ【救急箱】の効果2〜3行目
  誤:基本パーツ3つを選んで
  正:基本パーツ合計3つを選んで
 
「うん……? これはどういうことだい?」
「つまり特定の対象を選び、3パーツを修復前に戻すのではない。自身以外の姉妹全員で分け合っていいということ」
「ああ……姉妹全体(所有者除く)で3パーツ、ってことね」
「肯定。戦闘で有利に勝利した場合、さしたる問題ではない。ただし、『逃走』で終わり、修復パーツ自体が得られなかった場合なども想定される」
「ふぅん。だから複数の姉妹に割り振って使えることを強調したわけか」
「確かに全員で割り振れた方が便利ねー。あと、損傷の大きい【ゾンビボム】なんかを気軽に使う理由にもなるでしょーし」
(うう、皆さんのお話に入れませんわ……)
「そして、最後に最も重要なエラッタがある」
 
  ■P42 2レベル変異パーツ【おおつの】 効果最後に追加1文
  この効果は1カウントに1回まで発動する。
 
「なるほど……今までじゃ大成功さえすれば何回でも『連撃』が後から付け足せることになっていたからね。1回だけに限定するってことかな」
「元々、頭に生えてる角で追加攻撃ですから……そんな何回も頭突きするような効果は不自然ですし……」
「ゲームバランス上も好ましくない」
「でも、1カウントに1回ってことは、【号令】や【無限解体】【死の手】【せぼね】なんかで発生する同カウント重複使用もダメってこと?」
「そうなる。クイーンの提唱する“描写の自然さ”や、言葉としての簡素さを優先した結果」
「気をつけた方がよさそうだね。『支援』で【おおつの】頼りの大成功連発を想定したドールも多いはずだよ」
「一度の攻撃中に何度も発生しないから、単発で何回も大成功することが重要になるわけね。『支援』で行動値減らすことあるから……戦術も変わるでしょーね」
「その場合、姉妹の攻撃役と支援役を分けることを勧める」
「人数がいたらの話だね」
 
「……とまあ、今回はこんなところですわ」
「見事に『歪曲の舞踏』絡みの問題ばっかしねー」
「追加データだけでこれだけ出てくるとはね……」
「うう、言葉もありませんわ」
「とりあえず、ちょっとおしおきをしようか」
「!?」
「えっ?」
「――――」
「随分と待たせてくれたのに、『歪曲の舞踏』絡みばかりだったじゃないか。それにボク自身なんだかキミとは久しぶりだし……」
「そ、そんなぁ」(てれてれ)
「ちょっとっ! 何うれしそうにしてんのよ!!」
「――――緊急離脱」(ヴンッ)
「ひゃわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「えっ?」
「うわー、加速であちこち、ありえない角度に曲がってる。死んでなきゃ死んでるわー」
 
       ●
       ●
       ●
 
「あ、あのぉ、別に逃げなくても、コートさんとはいつものことですし……オートマトンさんも、プライベートではかわいい方ですわ。むしろ、今の離脱で私の体がたいへんなんですけど……」
「あまり馴れ合うと、後の精神衛生上よくない。私がクイーンのケアをし、今後のルール解析にも備える」
「はあ……でも、仲良くなっておいて悪くはないと思うのですけど……」
「とりあえず緊急離脱時に損傷した部位は念入りに修復する」
「んひゃっ! しゅ、修復でどうして指入れるんですのっ?」
「内部検査。患部その他を念入りに検査しなければ、クイーンの“選ばれし”パーツは通常規格と異なるため修復困難」
「そ、そうでしたの? では、お願いしっ、しますわ……っ」
「任された。【調律】スキルダウンロードも完了。離脱時に肌に付いた汚染大気の塵も、私の口部生体粘液ブラシにより分子レベルで洗浄して見せる」
 
       ●
       ●
       ●
 
「逃げられたか……彼女があの子に抱いているのは『独占』と見てよさそうだね」
「アンタねぇ。いくらなんでも馴れ合いすぎ! もうそろそろ別々に行動してないとダメでしょ!」
(そしてこっちは、ボクに『執着』かなぁ。距離感としてはあの子の方が居心地いいんだけど)
「ちょっと! 黙ってないでよ!」
「はいはい。ほら、ボクたちはボクたちで休もうよ」(ぎゅっ)
「さっ、さんざんアイツにもベタベタしてたクセにっ!」
「じゃあ、キミとはもっとベタベタしようか?」(ぎゅーっ)
「そ、そんなこと言ってない!」(じたばた)
「んー。聞こえないなー」(すりすり)
(わ、わかってるのに……振りほどけない……)
「じゃ、ゆっくり休もっか。次の出番までね……」





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